Yellow Green Mechanical

八神きみどりが文章を書くブログです。主に読んだ本や、観たアニメや映画の感想を備忘録として綴ります。

2018 12/17(月)の気持ち

2016年4月、僕は2次創作の短編を書き始めた。

 

僕は元々2次創作をするタイプの小説書きでは無かった。

小説を書き始めたのはもう10年も前のことになるが、1次創作……、オリジナル作品をずっと書き続けてきた。趣味として始めて、プロになりたいと思い、長編小説を書いて新人賞に送るようになってからも2次創作というものはずっと書いたことが無くて、なんだろう、他人が作ったキャラクターというものを動かせる気がしなかったのだな。例えば、まぁどんな作品でも良いが、特にシナリオという束縛が強い物語作品に於いては、その物語の構成そのものがそのキャラクターを一番映えさせるものとして存在していることになるので、基本的には、2次創作物というのはどう足掻いてもオリジナルを越える作品を生み出すことが出来ない構造になっている。前日譚だとか、後日譚だとか、そういったものを捏造することは出来るが、それは最早1次創作との区別が難しいものだという印象もあるし、あまりやる意義が無いような気がしている(それをするならもっと自分の色を混ぜ込んだ1次創作物として、別の作品として出力した方が良いのではないかとさえ思う)。まぁ、でも基本的にはそういうニッチなアプローチというよりは、作品進行上の、作品では描かれていない時間軸でのサイドストーリー的なものだとか、作品時間軸やキャラクター相関図を無視した、2次創作者の妄想を正しく具現化したものとして出力されるんじゃないかとは思っている。公式が最大手という言葉があるが、僕はあまり作品時間軸外での関係性だとかifだとかを妄想する習慣が無いので、必然的にそういった作品の作り方はしないことになる。自分が書く1次創作小説に流用出来ないか、みたいなことは考えたりするかもしれないし、「バッドエンドで終わったこの作品が、もしもハッピーエンドで終わったなら」みたいなことを思ったりもするが、それがその作品のガワを流用して新しい作品を作るモチベーションとしては働かないのだな。

そんな僕だが、2次創作小説は何作か書いたことがある。

4年前、『艦隊これくしょん~艦これ~』の同人アンソロジーに寄稿した短編が1本。

2年前、『アイドルマスターシンデレラガールズ』を題材に、pixivに上げた短編が1本。

作品タイトルを見て貰えばわかるとは思うのだが、どちらも作中に明確なストーリーが存在しないゲームだ。それどころか、キャラクター設定もかなり曖昧な部分が多く、世界観やキャラクターなど、まるで積極的に2次創作してくれと言わんばかりのこれらなら、僕は2次創作小説が書けるということを知った。頻繁にやってこなかったのは、普段からそういう考えを回していないのが主たる理由で、仮にやるなら徹底的にやらねば意味が無いという考えが理由になっている気がしている。この2本を書いて、その製作カロリーの重さに驚いたというのもある。ほぼほぼ1次創作をしているのと変わらない、ある意味ではそれ以上の労力が必要になる2次創作は、しかし新人賞の応募をメインに創作していた僕にとってはあまり意味の無いカロリーの使い方であることは手痛く痛感した覚えがある。何せその2次創作物を起点にしてプロになるみたいなことは出来ないわけだから、ならばオリジナル長編を書き続けるべきだと思ったのだな。別にこれは2次創作をメインに創作されている方たちを貶めるようなものではないので、単純に僕の個人的な考え方であることは留意して頂きたい。自分の妄想を具現化したいという欲求は、1次創作にせよ2次創作にせよ、創作者であれば確実に抱いている気持ちだ。むしろ僕みたいな考え方の方が異端だろう。別に全ての創作者がプロになりたいわけではないだろう。

さて、艦これの短編に関しては、正直記憶が曖昧だ。当時仲が良かった物書き仲間が、同人のアンソロ企画を立ち上げて、それに軽い気持ちで参加したとかだった覚えがある。これに関しては随分前からどこかに公開するなどしたい気持ちがあるのだが、本文が少し特殊で、ウェブ掲載の横書き体裁では書いた意図を十全に発揮出来ないという理由で先送りし続けて4年が経った……。まぁ気が乗ればやろうとは思っているが、あまりモチベは高くないのでどうしても読みたい方は何とかしてそのアンソロを手に入れてほしい。まぁ、そんな奇特な方はいないとは思うが、それはそれとして。

デレマスの短編のことはよく覚えている。

デレアニを、当時僕は毎週の生きる糧にしていたのだ。2クール放映された『アイドルマスターシンデレラガールズ』のアニメ版。僕は別にモバマスをやっていたわけではない、デレステから入ったにわかPだが、そのアニメを観ている最中にプロジェクトクローネというアニメオリジナルのユニット(ユニット……?)が出てきて、その中でコンビを組んでいた橘ありすと鷺沢文香という二人に興味を抱き、その関係性の変化に強烈な違和感を抱いて、「これは俺がやり直すしかねぇ」という誰に頼まれたものでも、むしろ誰も頼んでいないにも関わらず酷く盲目的な使命感に突き動かされて、その二人がユニットを組むまでの物語を捏造した。これに関しては本当にあれこれ書きたい気持ちがあるのだが、別にそれを書くことで何か良い作用が起きるわけではないのでこの辺にしておく。ありふみは良いぞ、とだけ言っておく。それから僕は橘ありすというアイドルに対して少々特殊な思い入れを抱くことになり、公式が一番の敵になるという最悪の末路を辿った結果デレステからも離れることになるのだが、そのエピソードも割愛させていただく。不幸な事件だったね、本当に……。

 

さて、ようやく前置きが終わった。

そう。別に隠すようなことでもないしpixivの僕のアカウントを発掘していただいて作品一覧を見て頂ければわかることなのだが、もう1作、僕は2次創作小説を書いている(はてブの外部サービス連携で貼ろうと思ったが、サービス連携設定が死んでいてURLを貼るしか無いので割愛する)。

2作目の2次創作小説と同じ、デレマスを題材にしたものだ。岡崎泰葉というアイドルについて書こうと思って、書き始めた。結果的に言えば、この小説は完成しなかった。

僕はこの2次創作短編を、1年ほど書いていたことになる。ありふみ2次創作を公開してから少しして、もう少し2次創作というものを書いてみようと思って、別に担当でも何でも無いのになぜか目に留まった岡崎泰葉というアイドルに興味を抱き、彼女について調べ、その在り方の「わからなさ」について思いを馳せ、彼女がなぜアイドルになろうと思ったのか、それを体現するとしたらどのようなものが適切なのか、というようなことを考えて書き始めた結果、前述した通り、結局それは完成することが無かった。

だが、かなり苦労して書いたものだった。その苦労を無駄にしたかったわけではない……と言うとニュアンスがやや違うのだが、まぁ何らかの区切りを付けることで考えるのをやめたかったのだな。この短編は、本当に書くのがつらかった。こんなにつらい創作はこれと、あともう2本くらいしか経験が無いのだが……。まぁ、1年書いていたとは言ったが、別に1年ずっとこの短編に掛かり切りだったというわけではないし、思い出した時に書き進めようとしていた感じなのだが、どうやっても完成するまでのビジョンが見えなくなってしまって、それで完成させないままにpixivに上げた。2018年1月の話だ。もう1年も経つのだという事実に軽く目眩を覚えるが、その作品ページに、先日コメントが寄せられた。

 

続きが読みたいというメッセージだった。

とても丁寧に書かれたそのコメントに、僕はとても驚いた。

僕は、この未完成の短編のことをしばらく忘れていた。まぁpixivの作品管理ページを見るなどはしていたのだが、この短編の続きを書こうなどとは一度も思わなかった。

特にここ最近はずっと構想を練っていた長長編のことを考えていて、それのプレ版みたいなものも書き始めていて、今年、2018年の前半までの時間を無為にしてしまったのでそれを取り戻すために、自分が今書ける最高の小説を書こうという気持ちを抱いて、相変わらず反比例する自分のモチベにままならなさみたいなものを抱きつつ、また最近書けなくなってしまって本当にどうしたら良いのかわからん、みたいなところに舞い降りてきた青天の霹靂だった。

その未完結短編のキャプションには、確かに書いた。反応があれば続きを書くかもしれない、と。だが、ほぼほぼ1年の時を越えてやってくるなどとは思わなかった。こんなことがあるのかと本当に、本当に驚いた。僕はそのコメントを見て思った。「いや、それは無理だ」と。僕はもうこの短編を書けない。書いてやりたい気持ちが無いわけではない。どうやっても納得が得られるものを創れない。それは終わりまでの道筋を見失っただけではない。そもそも僕は、僕の都合が良いように岡崎泰葉というアイドルを解釈して、ほぼほぼオリジナルのキャラクターと言っても差し支えが無いほどに装飾したのだ。正直に言えば、僕はSSといったものをまったく読まない。キャラが楽しい、カワイイだけの創作物に価値を見出すことが出来ない(SSという文化を否定しているわけではない、僕の性癖の話だ)。橘ありすにしても、僕は相当露悪的な人間として描いた。N、N+の橘ありすを踏襲したという言い訳は寄せられたコメントに対しても用いたが、岡崎泰葉はその比ではないくらい荒んだ人間として描いた、描こうとした。なぜなら、10年以上も芸能界で生きてきた人間だからだ。モデルとして活動していた岡崎泰葉が、モデルだけを生業にしていたわけではないという予感もあった。そんな人間がアイドルとしてスカウトされ、アイドルに成るのなら、それ相応のドラマが必要だと思った。Nのカードに用意されたあのコミュだけでは到底納得など出来ない。そう思ったから書き始めたが、僕は頓挫した。書けないと、思ってしまったのだ。これは甘えだろうか。甘えだろう。自分の作品に対して不誠実だし、何より、借りてきた岡崎泰葉というキャラクターに対して何よりの不誠実だ。

 

だが、自分の作品が求められているというのは、創作者にとっては得難い声だ。

プロならいざ知らず、僕はアマチュアの小説書きだ。そんな人間に、作品を求める声が届くなんてことはそうそう無い。間断無く作品を発表していれば、とは思うが、どうだろうか。ともあれ、僕にとっては数少ない声だった。とても嬉しいと思った。

 

正直、この短編を書き切ることはほぼほぼ無理だと思っている。

だが、せっかく声を上げてくれた読者の方に、応えたいという気持ちも確かにある。

久しぶりに書き殴ったテキストエディタを開いて、読み返すなどした。27500文字、pixivの方には上げてあるが、実は53500文字ほど書いてある。公開していないところまで読んで、相当苦しみながらも試行錯誤していた痕跡を見て取って、書いてやりたいという気持ちは強くなった。僕は続きが書けなくなると無限に書いた部分を推敲する悪癖があるので、書いた文章はそれなりに読めるものとして書かれていた。まぁ、自分が読みたい文章を書いているのだから、筆者本人がそう思ったとして、他人が読んでどうかはわからんが……。まぁ、言い訳みたいなものはこれくらいにしつつ、どうしようかなと悩んでいるのが今だ。

(続きを書くことを)考えてみると、返信した。期待はしないでくれとも書いた。どちらも紛れも無い本心だ。

もう少し考えてみようとは思っている。

どうなるかは本当にわからない。

マチュアの小説書きがいっちょまえにナルシズムに浸っているみたいな記事になってしまってやや後悔しているが、あまり無い経験をしたので、その気持ちをここに書き殴って記しておきたかった。

もう少し考えてみようと思う。

仮に完成したのなら、ここにお知らせするなどしようと思う。