Yellow Green Mechanical

八神きみどりが文章を書くブログです。主に読んだ本や、観たアニメや映画の感想を備忘録として綴ります。

2019 2/19(火)の、映画を観た気持ち

1週間に1記事は書いていこうという気持ちはあったものの、気付けば前回の記事を更新してから20日以上が経過し、このブログは放置され、すっかり荒れ野と化していた……。

 

いや、荒れ野になるような要素も無かったことに思い至ったのが今だが。

さて、百合文芸とかいう賞に応募するためにえっちらほっちら百合短編をこさえていたり、それに間に合わなかったり、間に合わなかったことが原因か内容そのものに原因があるのか、公開した短編がまったく読まれないことに悩んだりしていたが、そうしている内にも時間というものは勝手に経過し、もう20日以上も経っていることに絶望したりすることも出来るのが我々人間という種だ。それによって思うことだったり書きたいことだったりもあったような気がしたが、今、僕の中にそういった気持ちは一切無い。人間は過去にばかり囚われていてはいけない。これから先を見据えることが大事なのであって、なんかそのために出来ることをしていた。……いや、そんな大逸れた気持ちは流石に抱いてはいないのだが、なんかこう、上手く小説が書けなくなっているなぁ……みたいな気持ちを抱いていたところに、友人からその短編の感想を聞かせてもらったり、小説のことをみっちり話したりして、とりあえず今の僕が抱えている問題点をしっかり見つめようということになって、1日1本映画を観る生活をおくることとなった。それが1週間前の話だ。本当はそれに追加して本もどんどん読んでいこうという意気込みも抱いていたものの、脳を死亡させて日々を過ごしていた状態を克服するために、とりあえずは映画を毎日観ることでどの程度自分の生活や体調が変化するだろうかということを見定めることから始めたわけだが、これがなかなか、いやなかなかというか、かなりしんどい。考えることを放棄してVの者を追っていただけの生活がどれだけ楽ちんだったのか思い知っているのが今だが、とりあえずは、今のところこの習慣は続いている。あまりそれ以外のことに思考を割けない程度には疲労しているのだと思って頂ければ幸いだ。あまりにも貧弱過ぎるとかは言わないでほしい。それは自分が一番自覚していることだからね……。

これは重要なことなのだが、スタンスの問題として、僕は別に映画通になるためや、映画という媒体を好きになるつもりや、その作品たちを愛するつもりでこういったことをやり始めたわけではない、ということは最初に言っておきたい。

別に僕は普通に映画が好きだし、この習慣を始めるまではあまり熱心には観てこなかったが、まぁ観たい作品も沢山あったりして、そこから学べることも多いこともわかってはいたのだが、どうも普通に観て普通に楽しむだけでは勿体ないということは以前から思っていた。その構造を分析してこそナンボ、というか。まぁこれもそういうスキルを身に付けたり、そういう考え方を普段からしていないと難しいことは今、痛烈に自覚している。そもそも今の生活がただ無為に日々を過ごしていることも痛感していて、その生活を何とかするためという大前提がまずあった。本当は1本映画を観て、それで1日を終えてはならないのだが、まぁまずはそこから克服していこうという心積もりだが、このままただ映画観るだけマシーンに留まってしまう危険性は重々承知していて、そこから創作をしていく、というモチベーションを得るのは相当にハードルが高いということも自覚している。創作することにハードルを感じ始めた創作者の末路だと思って頂ければ幸いだ。これは、その復帰劇なのだ。恐らくは……。

そういうことなので、8本の映画を観た。

それについて、あまり文量が膨れない程度に記していこうと思う。

 

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初日に観た映画、『ウィッチ』。

ホラー映画は割と好きだし、なんかB級っぽくないにおいをサムネや紹介文から嗅ぎ取ったので観た。いや、B級ホラーは制作者の意欲が全面に出たものが多いので普通に好きなのだが、ちょっと違ったアプローチのホラーが観たかったんだよね、この日は。

とにかく映像表現が優れている。日本人の感覚としては少し受け入れがたい行動原理によって登場人物が動いているし、怪異というか魔女というか、それがどういう意味を持つのかも感覚的には掴みにくいとは思うが、話の筋を追っていくだけでもかなり楽しめると思う。わからないモチーフも後で調べれば良いと、僕は思っている。

結末に関しては観たひとによって受け取り方は変わるとは思うが、僕は納得という面が強かった。まぁ、そうだよね、というか。

現代日本魔法少女、魔女概念とは違った、キリスト教宗教観における魔女という存在について触れられる良映画だと思うので、興味ある方は是非に。

 

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名作と名高い『12モンキーズ』。

僕は好きになれなかった。フィンチャー監督の『セブン』と同じ年に公開されたこの映画だが、まぁ比べる対象として妥当ではないことはわかっているが、映像にしても展開運びにしても、ちょっと古さを感じてしまったね。

別に特別長尺な映画ではないし、無駄なシーンが沢山あったとも思わないが、なんか終始冗長だった。逆に、セリフに込められた情報としてキャラ立てという意味合いが強かったブラピの長台詞が一番映えていると思った。何より、回想が結末とリンクするシーンの呆気なさというか肩すかし感が強かった。その後を示唆するエンドロール直前のシーンも蛇足としか思えなかった。大どんでん返しをすることが正解だったとも思えないが、徒労を強く感じてしまったので、90分だったら満足したなぁみたいなことを思った。度重なる苦難には、それ相応の報われがあっても良かったんじゃないのかな……。

 

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2回目の視聴。この映画を構成する全てが好き。『インターステラー』。

あまり家族愛みたいなものは好きじゃないんだけど、それは家族というコミュニティを全肯定して「家族を愛することが全てだぞ」みたいな説法を説かれるのが薄ら寒いと思うのであって、父と娘の関係に絞って、展開と密接にリンクさせて主義主張としないところに好感が持てる。

登場人物の全員がやたら人間臭いよね……。それが良い流れも生むし、悪い流れも生む。人間を人間として描いてしっかりドラマにしてくれている。あと個人的に人類未到の領域や惑星みたいなモチーフが好きなので、それだけでワクワクしたというのもある。プロット分解するとキッチリ三幕八場になっている構成の美しさも然り。惜しむらくは2時間40分という大作で観るとみっちり体力を削られることだが、僕のオールタイムベストの1作は間違い無く『インターステラー』だ。

 

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ディカプリオが主演だから観ようと思った、『シャッターアイランド』。

この映画に関してはあらすじに書いてあること以上のことに踏み込もうとすると途端に全てがネタバレになってしまう恐ろしい映画で、この映画をオススメしたいという気持ちを書こうとすると「観ろ」しか言えなくなってしまうのだな。観ろ。

しかし、恐ろしく綿密な映画だった。全てのシーンに多層的な意味が込められていて、詳しく解説しているサイトがあるのだが、それに照らし合わせてシーンを見返していくとどんどん脳汁が溢れてくる素敵な映画だ。種明かしというか、大ネタに関してはまぁそれほど驚いたりはしなかったが、それを可能としている綿密さと、ディカプリオの最後のセリフが全ての映画だった。『シャッターアイランド』、良いぞ。

 

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コメディゾンビ映画、『ショーン・オブ・ザ・デッド』。

ゾンビ映画のお約束をことごとく踏襲していきながら、その全てを盛大に茶化していく手腕がお見事。なろう小説文脈における『このすば』みたいな立ち位置の作品というと大雑把な言い方だが、ゾンビ映画を1本でも観たことがあるならめちゃくちゃ楽しめる映画なんじゃないかと思う。僕は楽しめた。別にゾンビ映画全然観てないけど。

しかし、よくよく考えるとゾンビパニックの意味合いも反転させているんだね。それが人生の転機になるってアイデアはジャンルの成長の中で生まれてくる必然かもしれないが、それをここまで完璧に作品として落とし込むのは純粋にスゴイと思う。あと、最後のシーンの直前に、ショーンがエドの口癖を踏襲してるじゃん。それからのラストカットを見て、「あぁ、ショーン、実はちゃんと受け止めてきれていないんだなぁ」と思って少し物悲しい気分になったんだけど、そう思ったの僕だけですかね……。他にもいたら挙手してください。僕に知らせてくれなくて良いので。

 

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ネットフリックスオリジナル、ウィル・スミス主演『ブライト』。

観よう観ようと思っていてようやく観た。僕は結構好き。でも感想投稿サイトとかで軒並み評判が悪いみたいでめっちゃ驚いた。

現代を舞台にした亜人種や魔法が登場する作品をずっと観たいと思っていて、似た系列の作品だと賀東招二先生が書いてる『コップクラフト』ってラノベがあったりするんだけど、あれの1巻が思ったより肩すかしで、その不満を埋めてくれるくらいには面白いと思った。

ジャンル違いの『ロード・オブ・ザ・リング』と比べたり、ファンがやたらウィル・スミスをよいしょしてたり、普段サスペンスを観ない層だったり、現代に亜人種がいて魔法もある世界観をそもそも飲み込めない層とかがガチボコに叩いていたけど、勿体ない時間の使い方だなぁって思うし、確かにネットフリックスは映像主義的な考え方が強そうだなとは思ってるけど、普通によく出来たアクションサスペンスだと僕は思った。まぁ、万能アイテムという存在と、クライマックスシーンはどうかなとは思ったけど。

ちなみに『ブライト』がダメで『ズートピア』がオッケーってひとがもしいるなら、ぜひその意見を聞いてみたい。『ズートピア』には人間も実在の都市も出てこないって言われたらなるほどって感じだけど、どう想像力と許容ラインにバイアスが掛かっているのかは切実に知りたいですね。

 

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実在する未解決事件を題材にフィンチャー監督が撮った『ゾディアック』。

とにかく疲れる映画だった。『インターステラー』より数分短いのだが、疲労感は倍以上だった。登場人物たちの徒労感をトレースするために観ていると言っても過言では無いと思った。いや、マジで。

状況証拠は挙がっているのに決定的な証拠が見付からないから最重要容疑者を逮捕出来ない憤りな。記者、刑事、新聞社の風刺漫画家と、この事件の捜査をする人間はことごとく泥沼に嵌まり込んで人生を停滞させていくのだが、その様子がこれでもかと組み立て尽くすフィンチャー監督の構成力はさすがといった感じだ。この風刺漫画家が実際にゾディアック事件に関する本を書き上げて、それをもとに作られたのがこの映画とのことだが、「(この事件の)本を書き上げろ」と、捜査を諦めざるを得なかった刑事から託されて実際に本を書き上げてベストセラーになったその妄執は素直にスゴイと思った。ただ、彼をそこまで突き動かしたものは何だったんだろうね……。暗号好きが高じたにしては、鬼気迫りすぎていたように思う。

 

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こちらも実在の超常現象事件を扱ったホラー映画、『死霊館』。

死霊館』はめちゃくちゃ怖いぞ、ということを誰かしらが言ってたように覚えているが、それで興味を持って観ようと思った。怖いホラー映画が観たい気持ちが僕は強い。実際に怖かったというとそれほどでも無かったが、正統なホラー映画という感じがして非常に好感が持てた。いや、ホラー映画の文脈とか全然知らんが。

これ、本当に実在の事件なんです!?というくらいに様々な怪異が複合的に絡み合っていて、何の理由も何の救いの余地も無く、新しく住むことになった家族たちを追い詰めていくその整合性の無さみたいなものは純粋なホラーだ、という感じがした。やはり怨霊や悪魔といった存在は大した理由も無く人間をぶっ壊そうとしてくれなきゃな、という気持ちだ。人間が理解出来ないものは、人間が理解出来ないからこそ、というような気持ちは常々抱いているので、その辺肩すかしを食らわなくて本当に安心した。

演出面においては、視聴者を驚かせるに当たってめちゃくちゃ丁寧に準備してから盛大に驚かせてくれるのが良かった。静と動というか、その辺のバランスは絶妙だったね。

この映画の一連の事件、詳細は明らかにされていないらしいが、ちゃんと家族は無事にこの家を出られたのかしら。完全なフィクションなら……みたいなことは考えてしまうが、でもあの短期間にあれだけのことが起きるってだけで異常性は極まってるよね。

 

こんなところだろうか。

分析したいとか言いながら思ったことを思ったままに書いただけに終始してしまったが、別に分析したことを披露することに意義はそれほど感じていないので、もしこれを観たひとが興味を抱いてくれたら、みたいなことを重視して書いた。一部結末にも触れているが、まぁそこに触れずに感想を書くのも難しいので……という感じだ。

まだまだ映画を観る日々は続いていくが、どこまで続けられるかは自分でも見物だし、そろそろ本を読んだりして映画を1本観ることを生活ルーチンに完全に落とし込みたいですね……。